東野圭吾「ゲームの名は誘拐」

ゲームの名は誘拐 (光文社文庫)

ゲームの名は誘拐 (光文社文庫)

東野さんの本は相変わらずどれもこれも水準以上に面白くてすげーな。もう十五作ぐらい読みましたけど、このソツのないエンタメっぷりは職人芸の域。とまあ昔から散々書き散らした手あかのつきまくり感想を言っても仕方ないので、ここで本編感想をば。
まさにゲーム小説。「彼女」の不憫さをゲーム本体の構造に説得力を持たせるための裏事情として無感動に片づけることさえできれば、「誘拐」ものに欠かせない警察との丁々発止をあえて取っ払って「誘拐される側」「誘拐した側」の頭脳ゲームにしてしまっているところは新鮮ですし、犯人と被害者側家族のやりとりに携帯電話からインターネット掲示板、FAXから様々な伝達手段を取ってるところに感心。特にインターネット掲示板でのなりきりやりとりは「こんな手を考えつくとは」と素で感心してしまいました。
というわけで、手段やゲーム的展開は面白いんですけど、ストーリー的な感動はほとんど無いに近い(「悪人しか存在しない小説」を読んでみたい人の入門編として考えればいいかもしれませんが、そういう人には入門編というよりもいきなり劇薬レベルをぶつけた方がいい気もします)のでご注意。