マイケル・マローン「最終法廷」

最終法廷〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

最終法廷〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

最終法廷〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

最終法廷〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

「権力者のもつれ合った貪欲と、誤てる個人的、政治的忠誠心を隠蔽するための、おぞましい工作の犠牲にならずに済む権利を! 貧しい黒人であるがゆえに、お座なりに、さっさと裁かれるなどという目に遭わずに済む権利を。正当防衛で黒人を射殺した白人なら告発さえされないであろうのに、同じ正当防衛で白人を射殺したために死刑を宣告されるなどということにならずに済む権利を。平等に取り扱われる権利を。人から奪うことのできない、その権利こそ、あなた方陪審員が守っている、真の輝くべき灯火なのです!」
<弁護側最終弁論 アイザック・ローズソーン>

法廷、捜査、アクション、ロマンスとエンタメコード満載ですが、アメリカ人種問題を根底に据えた硬派な作り。あと翻訳がやや固め。でも私は翻訳はやや固めのアルデンテが好きです。
ああ、でもやはり基本はエンタメ小説ですね。
法廷部分にしろアクション部分にしろ、元から悪役が解りきっているし、主人公が全てを、とりわけ自分を憎んで自殺するとかいうノワール展開もまずありえないノリですので、読んでいて安心感があります。
人質を取られたりするシーンはお約束ながらドキドキしますし、言ってみれば決戦シーンにあんなもので駆けつけた主人公の親友には度肝を抜かれたりと、要所要所で驚かせてくれる良質のエンタテイメント。
法廷でも、弁護人が陪審忌避シーンでクレバーなところを見せてくれたり、重要証人がアクシデントで死人に口なしになってしまったりと小技が効いています。
上巻は事件の説明と捜査に終始して、微妙に退屈ですが、下巻から転がり落ちるようなリーダビリティ。
駒は大体揃った。さあゲーム開始だ。なんてシーンはどうしてこんなに興奮するんでしょうか。私がゲーム好きだからか。