ロバート・B・パーカー「失投」

失投 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 110‐1))

失投 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 110‐1))

「いいか、個人であるということは、謂わば奔放で恣意的なことなんだ。その点は君も気付いているかもしれん。だから、その度合いが過ぎて手に負えなくなるのを防ぐために、人は何かを信じる必要がある」
<ダブルスタンダートの苦悩にまつわるマッチョイズム スペンサー>

本の感想を書かなくなってから読書スピードが激減しました。「他人に見られるからこそ人は日常を演出することができる」とは蓋し名言ですね。いや、私の言葉なんですが。
というわけで、今日読み終わった本の話でも。


スペンサーシリーズ初読。
なぜかこの作者の話を、「ダブル・スチール」みたいな野球をメインにしたミステリが多いのだと勘違いしていました。表紙のせいだな。
内容はハードボイルド、私はハードボイルドを見る目がこれっぽっちもなく、「ハードボイルドという、生き様。」的なものが小揺るぎもしないタイプのクールなタフガイ的アメリカ探偵にあまり魅力を感じないので*1、今回も「なんかよくメシのシーンが出てくるハードボイルドだな、コーンウェルの作品みてえ」という感想しか抱けず云々。
事件の構成も「聞き込みによる手がかりの追跡→脅迫者のとっちめ」という探偵の王道的なものなので、ミステリ的に印象に残る場面もなし。
ただ、アクションシーンで二人のならず者を殺害してしまった件について、恋人とディスカッションする最後の数ページは面白かったです。ていうかここが書きたかったんじゃないのか、と思うほど。
と思っていたら解説でも書かれていました。読者の後だしをする解説はいかんな。いや、申し訳ない。図に乗りました。

*1:なぜかこれが日本作品だと「キャーカッコイー」になる。アメリカ人はタフで当たり前、というイメージのせいだと思う。