ジェイムズ・リー・バーグ「天国の囚人」

天国の囚人 (角川文庫)

天国の囚人 (角川文庫)

私は聖書に通じているわけではないし、私の信仰などいい加減なものだ。しかし、聖書のあの詩行は、私の頭では導き出せない答えをいっているように思える。すなわち、われわれほかの人間に代わって苦しむ汚れなき者は、神によって特別に選ばれ愛されるのだ。彼らは天国の囚われ人なのだ。
<殺された彼女と罪なき少女に思いを馳せて デイヴ・ロビショー>

記憶のハードボイルド、という感じがします。あるいは思い出。
ありとあらゆる状況に対して、必ずと言っていいほど「こういう奴がいた」と思い出話をする。浅学にしてハードボイルドをあまり読み込んでいるわけではありませんが、ここまで細かいエピソードが乱用されるミステリを初めて読みました。
話の大筋としては、プライドに対する高いツケを支払わされた主人公が復讐のために立ち上がる話です。文庫の裏に書かれている「メインのあらすじ」とされるものが実は表向きのシナリオでしかなかったという希有な例。ただ内容を表していないよくある裏と言われればその通りなのですが、完全に的はずれでもないので評価に悩むところ。いや、裏のあらすじの評価なんてどうでもいいや。


あ、これ映画化もされていたんですね。でも別に見たいとは思いません。ハードボイルドを映像で見ても、あまりにも展開の流れが速く、また是非の説明されないあまりに多くの暴力シーンのせいで、実のところさっぱり展開が解らなくなることがほとんどなので。