川上弘美「溺レる」
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2002/09/03
- メディア: 文庫
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「死に日和ですね」
「ちょっと死に日和すぎて困ってしまいますね」
<何にオボレたいのか モウリさんとコマキさん>
初川上弘美。いただきものです。
一風変わった恋愛短編集。それとも私が一風変わった、と感じるだけで、今はこういうのがメインストリームなのかしら。違うと思うが。
熱意とか気力とかに乏しい女性と、そこに入り込んでしまう男性と。どう見ても彼らはヤケクソくさいのに、静謐な印象があります。
不思議な感触で、NHKがラジオドラマにしてくれると相当いいんではないかしらと思う。ヒロイン役は中村メイ子で。
- 「さやさや」
食べ物は蝦蛄。キーワードは「さみしい」。
- 「溺レる」
表題作。キーワードはそのまんま「オボレる」。
互いに溺れているのか、溺れたいのか、それとも溺れても溺れたくもないのに「溺れたい」と思いたいと望んでいるのか、それが両方なのか片方なのか、結構想像力を掻き立てられます。
何に溺れたいのか。
- 「亀が鳴く」
あ、私もこんな感じですな、と言いたくなる女性が主人公。キーワードは「まっとうできない」。
男性方はこの短編集の中ではかなり激情を表に出すクチでしょうか。こういうギャルゲーヒロインがいたらイヤだな。
- 「可哀相」
キーワードは「痛い」のか「可哀相」なのか。
あー、生ダコ食いてえなあと思いました。
- 「七面鳥が」
キーワードは「おそろしい」? 非常にエロいと思いました。
「蹂躙したいと思っていたら蹂躙された」とか何だか面白い言い回しですね。
- 「百年」
キーワードは「死んだ」。
どう考えても「『坊ちゃん』の清のような女だ」は誉め言葉ではない。どんな立場のどんな女性に言おうと、あれは誉め言葉ではない。
特に男性が自分を坊ちゃんと規定して女性に言う場合、それは非常に傲慢であるが、この話の場合、ヒロインがその言葉を受け止めてしまって大事にしてしまっているところが切ないと思う。
- 「神虫」
キーワードは「虫」。
「あなたは虫のような人ですね」という台詞は、時と場合によってはとてもセクシーですね。言われたいとは全く思わないけれど。
- 「無明」
キーワードは「変わらない」?
死なないっていうのはまあ、大変なことですなあ、と思いました。