恩田陸「光の帝国」

光の帝国 常野物語 (集英社文庫)

光の帝国 常野物語 (集英社文庫)

やがては風が吹き始め、花が実をつけるのと同じように、そういうふうにずっとずっと前から決まっている決まりなのだ。僕たちは、草に頬ずりし、風に髪をまかせ、くだものをもいで食べ、星と夜明けを夢見ながらこの世界で暮らそう。そして、いつかこのまばゆい光の生まれたところに、みんなで手をつないで帰ろう。
<祈りの文句 健の考案による>

異能の一族をめぐるオムニバス短編集。
結局「光の帝国」の光とは何なのか、「光の帝国」から流れた「国道を降りて…」で、彼らは本当に光にたどり着けたのか、安心していいのか、いいなら安心するぞ。
「不思議で結局なんなのかよく解らない薄ら寒い怖さ」恩田陸節小爆発といったところ。
私は恩田さんの持ち味である、結局正体の判然としない都市伝説のような怖さが大好きなので、本作もおいしく戴きました。
と言いたいところですが、何というか、「本編があって、その登場人物のサイドストーリーを読まされてる感じ」はぬぐいがたいですね。
「図書館の海」を単独で読んだ時の感じ。
優しい話もあれば不思議な話もあり、ちょいと怖い話もあり、「図書館の海」よりはそれぞれちゃんと完結している感じもするので、興味がおありならば読んでみても悪くない。*1


追記
「蒲公英草紙」というタイトルで2が、「エンド・ゲーム」というタイトルで続編や傍流が出ているんですね。
なんというジュニア小説っぽさ。

*1:何様か