北村薫「リセット」

リセット (新潮文庫)

リセット (新潮文庫)

「時と人」シリーズ三作目。
スキップが「跳躍」、ターンが「繰り返し」、とすると今回は「経過」とも言うべきでしょうか。「リセット」というタイトルに合わせると、「経過と忘却と再生」といったところですかね。なんか違う気もしますが。


さて、本作は、結論から言えば私の好みではありませんでした。
スキップやターンにおける、過酷な時の悪戯と言いますか、一歩間違えばホラーと言いますか、いわゆる『デキの悪い悪夢』とすべき状況を、北村的主人公が北村的穏やかさで前向きに乗り切って行こうとするところに私は面白みを感じていました。
しかし本作、宮部みゆきが文庫版対談で表現しているように、時間が優しすぎるのです。
登場人物が比較的多めなので、足下に穴が開いたキャラもいますし、悪夢を見たキャラもいますが、総じて何といいますか、時代に弄ばれても時間そのものに弄ばれたキャラは存在しない。
スキップやターンのようなSF的理不尽さに嘆いてほしいな、と思う私はやっぱり若造でしょうか。
『いきなり40歳になっちゃったら怖いよな』とか『同じ日がぐるぐる回るなんてすごい怖いよな』とか思ってしまう以上。時と人は、そんな怖い状況下で妙に生活感たっぷりの達観をしてしまうキャラがすごいシリーズだと思っていたので。