石崎幸二「首鳴き鬼の島」

首鳴き鬼の島 (ミステリ・フロンティア)

首鳴き鬼の島 (ミステリ・フロンティア)

「父親なんていなくてもいいから、逃げちゃおうかな」
ダブルミーニング 牧村美紗子の発言>

石崎さんから送っていただきました。ありがとうございます。
三ヶ月前に!!
どんだけ不義理すりゃ気が済むんだ、というか、mixiに感想書いて、なんかこうもっと成形してウマいこと言おうかなと思って、ウマいこと言えなくて、うんうん悩んで放置してました。
しょうがないのでmixi感想を再録します……。
他の人の感想といつの間にかかぶりまくっているのがアレでソレ。乗り遅れた感ありあり。
しかし他の方が絶賛されているのが無茶苦茶うれしい。いや私全然関係ないんですが。こう、信者として。
以下感想。


まず本音。
なんかこう、石崎さんは、女子高生がいないとやっぱりアレなのかもしれない、とちょっと思いました。
石崎さんは、異様にモテなくて、無闇に女性から虐げられていて、妙に疲れた理系サラリーマンの石崎さんだから良かったんだ、と思った。
今回の主人公像は今のところ、割と微妙か。何となくセンシティブなアロマ漂う文系主人公は、別に石崎さんでなくてもいいわけですし。いやいや。こんなことを言っているようでは信者失格である。
レーベルが違うからと作風の転換を図ったのはよく解るのですが、なんかこう中途半端に蘇部健一っぽくなったというか。
説明的な会話文が多く、リリシズムともペダンティズムとも縁がない作風ですんで、コメディに走ってる講談社シリーズは普通に面白かったのですが、今回は連続殺人ということもあって、終始シリアスな(そのくせなんっか間抜けな空気が漂うのが蘇部健一に似てますが、これが計算なのか偶然の産物なのか)雰囲気で、妙にもにょったというか。
雰囲気だけ取るなら2時間サスペンスのト書きをそのまんま落とし込んだようなノリで、あのチープな雰囲気が好きな人にはたまらないでしょう。
でもどちらかといえば、ええと、なんつーか、一見さんには薦められません。
中盤の中だるみ具合、解決に至る前段である科学技術説明が淡々としすぎていて、絶対途中で投げられる。


トリックの構造はすごく面白かったです。待った甲斐があったというものです。
二重にどんでん返した上に、更に固定観念を突き崩すやり方は、手法として最高なのですが、しかし二つばかり問題点が。
一つ目は、一重目の解法、二重目の解法ともに「今時それはないわ」と思えるようなものだったこと。二時間ドラマ的雰囲気に乗せたミスディレクションだとしたらすごいんですが。
二つ目。このテのものは、「本当にこの知識は正確なのか」という疑念がついてまわること。このひっくり返し方は本当に面白いのに、今ひとつ心からびっくりできない。いや、読んだ時はマジ「やっべ! すっげ!」と思ったのですが、後から冷静に考えてみると、そんな感じにブレーキがかかってしまうのが。


全体として
行間や台詞回しにユーモアの名残がありますが、今までの石崎作品のようなわかりやすい掛け合いギャグはありません。
ミステリとしては「あらゆる箇所に解答に繋がるキーワードが秘められている」がちがちの本格です。そして勿論孤島です。
ここまでガチの本格は久しぶりかもしれません。
パラグラフのあちこちにヒントが隠されているタイプの構造的な本格をこよなく愛する人には全力でお勧めできます。


余談ですが。
誰とは言いませんがこのキャラはひでえw
女怖い。
なんかノリが「袋綴じ事件」の瀬尾孝美みたいな。いや彼女よりひどいか。


それと、我らの文化圏では炎色反応の語呂合わせは
「リアカーなきK村動力借るとするもくれない馬力」
でしたね。今回の作品で上げられた語呂合わせは地域差を感じました。