加納朋子「ガラスの麒麟」

ガラスの麒麟 (講談社文庫)

ガラスの麒麟 (講談社文庫)

世界はとうの昔に、修復不可能なほどに歪んでしまっている。理不尽な死も不条理な生も、甘んじて受け入れなければならない。
なぜなら、彼らこそはお終いのネメゲトサウルスなのだから。
<それでも独りはさみしいと思う エピローグより>

それぞれの短編が絡み合ってひとつの物語を作っているタイプの短編集。サブタイトルは動物で統一されてます。
奥付を見る限り、色んな雑誌に掲載されたものの再録っぽいですが、そもそも作品が全部ひとつの結末を指向しているように見えるため、雑誌で読んだ人は消化不良感があったんじゃないかなあと余分な心配。
このテのタイプの本を読むといつも同じことを思うな。恩田陸のいくつかの短編集では、本自体に消化不良感があるのですが。どうにかならんのか、あれは。*1


ややグロかったり痛そうだったりするシーンもあって、加納さんの小説の中では凄惨な部類ですが、全体にスッキリしていてスマート、かつものがなしくも優しいところのある作りですので、「読書体験には崩壊感が必要だ」とか「もっと血を! より凄惨な、八百万の死に様を!」とか言い出すやつ*2でもない限り、おともだちに安心して薦められますね。


余談ですが、はまぞうで検索してみたところ、やっぱりコミカライズは碧也ぴんくか。「ささらさや」あたりからもう決まってんだな。
あの人の絵は加納作風によく合うからいいと思う。

*1:この悪態も何度目だ

*2:だれとは言わない、ましてや自分のことだなどと!