加納朋子「ガラスの麒麟」
- 作者: 加納朋子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/06/15
- メディア: 文庫
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世界はとうの昔に、修復不可能なほどに歪んでしまっている。理不尽な死も不条理な生も、甘んじて受け入れなければならない。
なぜなら、彼らこそはお終いのネメゲトサウルスなのだから。
<それでも独りはさみしいと思う エピローグより>
それぞれの短編が絡み合ってひとつの物語を作っているタイプの短編集。サブタイトルは動物で統一されてます。
奥付を見る限り、色んな雑誌に掲載されたものの再録っぽいですが、そもそも作品が全部ひとつの結末を指向しているように見えるため、雑誌で読んだ人は消化不良感があったんじゃないかなあと余分な心配。
このテのタイプの本を読むといつも同じことを思うな。恩田陸のいくつかの短編集では、本自体に消化不良感があるのですが。どうにかならんのか、あれは。*1
ややグロかったり痛そうだったりするシーンもあって、加納さんの小説の中では凄惨な部類ですが、全体にスッキリしていてスマート、かつものがなしくも優しいところのある作りですので、「読書体験には崩壊感が必要だ」とか「もっと血を! より凄惨な、八百万の死に様を!」とか言い出すやつ*2でもない限り、おともだちに安心して薦められますね。
余談ですが、はまぞうで検索してみたところ、やっぱりコミカライズは碧也ぴんくか。「ささらさや」あたりからもう決まってんだな。
あの人の絵は加納作風によく合うからいいと思う。
メモ
買い物メモなんか付けて、「おれこういうほん読むんだぜ」っていうなんらかの宣伝と「この本のかんそうをいつかやるよ」という予告以外、全体何の役に立つんじゃあ、と思っていた時期がありました。
普通に何読んだか覚えておくためにすごく有用でした。何読んでないか、何買ったか覚えておくにも有用ですね。大体ローレンス・ブロックやディック・フランシスなんて、どれ読んだか忘れるんですよ。私だけか? タイトル似てね? 「死者の長い列」と「死者との誓い」と「慈悲深い死」と「死への祈り」は混乱する。
正直、読んだ本を記憶しておける人はすげえと思います。脳の容量が20GBぐらいあるんじゃないか。次世代機。私の脳の容量はせいぜい言って8MBぐらいかしら。PS2。
でも人間の脳って動画結構入るんですよね。文字情報は入りにくいくせに。
フレデリック・フォーサイス「騙し屋」
フレデリック・フォーサイス「売国奴の持参金」
ディック・フランシス「告解」
ドロシー・L・セイヤーズ「五匹の赤い鰊」
エドワード・D・ホック「サム・ホーソーンの事件簿1」
ティム・ウィロックス「グリーンリバー・ライジング」
ジョン・S・ヒッチコック「目は嘘をつく」
原りょう「愚か者死すべし」
中嶋博行「司法戦争」
石崎幸二「首鳴き鬼の島」
- 作者: 石崎幸二
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/08
- メディア: 単行本
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「父親なんていなくてもいいから、逃げちゃおうかな」
<ダブルミーニング 牧村美紗子の発言>
石崎さんから送っていただきました。ありがとうございます。
三ヶ月前に!!
どんだけ不義理すりゃ気が済むんだ、というか、mixiに感想書いて、なんかこうもっと成形してウマいこと言おうかなと思って、ウマいこと言えなくて、うんうん悩んで放置してました。
しょうがないのでmixi感想を再録します……。
他の人の感想といつの間にかかぶりまくっているのがアレでソレ。乗り遅れた感ありあり。
しかし他の方が絶賛されているのが無茶苦茶うれしい。いや私全然関係ないんですが。こう、信者として。
以下感想。
まず本音。
なんかこう、石崎さんは、女子高生がいないとやっぱりアレなのかもしれない、とちょっと思いました。
石崎さんは、異様にモテなくて、無闇に女性から虐げられていて、妙に疲れた理系サラリーマンの石崎さんだから良かったんだ、と思った。
今回の主人公像は今のところ、割と微妙か。何となくセンシティブなアロマ漂う文系主人公は、別に石崎さんでなくてもいいわけですし。いやいや。こんなことを言っているようでは信者失格である。
レーベルが違うからと作風の転換を図ったのはよく解るのですが、なんかこう中途半端に蘇部健一っぽくなったというか。
説明的な会話文が多く、リリシズムともペダンティズムとも縁がない作風ですんで、コメディに走ってる講談社シリーズは普通に面白かったのですが、今回は連続殺人ということもあって、終始シリアスな(そのくせなんっか間抜けな空気が漂うのが蘇部健一に似てますが、これが計算なのか偶然の産物なのか)雰囲気で、妙にもにょったというか。
雰囲気だけ取るなら2時間サスペンスのト書きをそのまんま落とし込んだようなノリで、あのチープな雰囲気が好きな人にはたまらないでしょう。
でもどちらかといえば、ええと、なんつーか、一見さんには薦められません。
中盤の中だるみ具合、解決に至る前段である科学技術説明が淡々としすぎていて、絶対途中で投げられる。
トリックの構造はすごく面白かったです。待った甲斐があったというものです。
二重にどんでん返した上に、更に固定観念を突き崩すやり方は、手法として最高なのですが、しかし二つばかり問題点が。
一つ目は、一重目の解法、二重目の解法ともに「今時それはないわ」と思えるようなものだったこと。二時間ドラマ的雰囲気に乗せたミスディレクションだとしたらすごいんですが。
二つ目。このテのものは、「本当にこの知識は正確なのか」という疑念がついてまわること。このひっくり返し方は本当に面白いのに、今ひとつ心からびっくりできない。いや、読んだ時はマジ「やっべ! すっげ!」と思ったのですが、後から冷静に考えてみると、そんな感じにブレーキがかかってしまうのが。
全体として
行間や台詞回しにユーモアの名残がありますが、今までの石崎作品のようなわかりやすい掛け合いギャグはありません。
ミステリとしては「あらゆる箇所に解答に繋がるキーワードが秘められている」がちがちの本格です。そして勿論孤島です。
ここまでガチの本格は久しぶりかもしれません。
パラグラフのあちこちにヒントが隠されているタイプの構造的な本格をこよなく愛する人には全力でお勧めできます。
余談ですが。
誰とは言いませんがこのキャラはひでえw
女怖い。
なんかノリが「袋綴じ事件」の瀬尾孝美みたいな。いや彼女よりひどいか。
それと、我らの文化圏では炎色反応の語呂合わせは
「リアカーなきK村動力借るとするもくれない馬力」
でしたね。今回の作品で上げられた語呂合わせは地域差を感じました。
色川武大「喰いたい放題」
- 作者: 色川武大
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/04/12
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ところがそれが、なんともヴィヴィッドで、かわいくて、貴重なものに見えて、生唾がわくほどうまそうにみえた。ああ、こういう食事というものもあるのか、と思った。
<食を尊重する姿勢がものをうまそうに見せる例 「大喰いでなければ」より>
いわゆる日常の食、美食ではなく飽食にベクトルの傾いた一冊。
言ってみりゃ小説とかで何気なく出てくるメシ話のノリをエッセイでやってみました、といった感じ。
「だって腹が減ってるんだもの」という視線で書かれたメシ話は素直にうまそうに感じるからいいですね。
私はあまり食えないクチなので、「胃袋以外の内臓の調子が悪くてあまりバクバク食えないですよ」という前提に感情移入。
満腹でも食いたいし、制限されてても食いたいし、ていうか気持ち悪いし、もう何が食いたいとか考えたくもないけど、でもやっぱり食いたい、みたいな、満腹まで食った後の滅亡したい感覚はなんなんでしょうね。色川さんはそれを胃薬で片付けるとか堕落してんな、でもそれがよい。
単純なメシ話だけでなく、食材にまつわる風景・風俗、「食う」ということ、そういったことについて書かれていてなかなか興味深い。トリビア的な意味ではなく。
今日から
日記くさいことはこちらに書くことにします。
萌えっぽいことは、萌えていることがWWWの荒野に跋扈するポリティカルなクリーチャーに観測されるとちょっと困るものに今は萌えているので、適宜mixiに。
しかし今までだって、mixiに日記くさいことはあまり書いていなかったような気もする。
まあいいか。
とはいえ、ブログに書くほどのことが思いつかない。
mixiでは文法とか気にして書いてませんのでぼろぼろでした。いささかきがくるっとる調ですらあったかもしれません。ゆえにその調子でしか日記が書けません。
ヌルヌルリハビリをすることにしましょう。
いまかんがえていることメモ
女性向け二次創作におけるレイプ描写はどこまで記号化が許されるのか
たぶん結論は出ないでしょう。